東北大学新聞:

MRIでリチウム電池内部撮影に成功

東北大多元物質科学研究所の河村純一教授、岩井良樹さんらのグループはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)事業の一環として、医療用として使われるMRI(磁気共鳴断層撮影法)を応用し、世界で初めてリチウム電池内部の断層撮影に成功した。また、医療用のMRIでは感度が低く検出の困難なリチウムイオンのMRI画像測定にも成功した。この成果は7月10日に東京国際交流館で開催された独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発平成20年度成果報告会にて発表された。

MRIは強力な磁場の中で物体に電波を当て、原子核のスピンから返される微弱な電波を検出して画像にする。このため、金属のケースに収められ、金属の電極を用いる通常のリチウム電池では微弱な電波が透過できず、MRIでの内部撮影は困難とされてきた。河村教授らは金属の代わりにガラスやプラスチックを用い、電極の配置を電波の照射方向と平行にするなど工夫することでこの問題を克服した。
リチウム電池は高電圧・高エネルギー密度・軽量という特性を持っている。このため、携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラなど小型の電気機器に利用されており、最近では電気自動車用のバッテリーとしての研究も進んでいる。しかし一方で充放電を繰り返すことによる電池の寿命、電解質が液体であることによる発熱などの安全性や信頼性においての課題は残されている。今回のリチウム電池内部撮影の成功により、充放電を繰り返した際の電解液の変化や劣化、リチウムイオンの分布の観測が可能となり、リチウム電池の安全性向上や劣化防止技術の開発などにも応用が期待される。
NEDOではハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車などの次世代クリーンエネルギー自動車の実用化に向けた研究・開発を行っている。電気自動車へのリチウム電池の利用には安全性や耐用年数への大きな制約があり、河村教授は「リチウム電池バッテリーの寿命を10年はもたせたい。」と語る。
河村教授らの研究室ではこのMRIを利用した観測の他に、リチウム電池内部の崩壊時に発せられると思われる微小な音を検出し分析するアコースティックエミッション法や、レーザーを用いて電池から反射した光のスペクトル変化を調べる顕微ラマン分光法といった多角的な手法でリチウム電池内部の変化の観測を行っている。今後はこの研究成果を基に、電気自動車にも使える高容量・高出力なリチウム電池の研究と、固体電解質を用い安全性・長寿命性に優れた全固体薄膜電池の作成という二つの研究を行っていく。

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