東北大学新聞:

借り物競走やってみました

皆さんは借り物競走をしたことがあるだろうか。借り物競走といえば運動会である。箱に入った紙を引き、そこに書いてある品物を借りてくるために保護者席まで駆けていく。これが代々伝わる借り物競走というものだ。

しかし、私の所属していた小学校、中学校、高校と借り物競走を運動会の種目に取り入れている所はどこにもなかった。借り物競走にある種の憧れを持っていた私は落胆した。ほかの学校の運動会ではきっと、楽しく借り物競走をしていることだろうと思いながら。
大学まで進学したある日、友人と出身校の話をしていた。私は借り物競走で何を引いたのかと質問したところ、衝撃の事実が分かった。彼の学校でも借り物競走は開催されていなかったという。それだけではない。周りに居合わせた友人たちもやったことがないらしい。借り物競走はマイナー種目だったのだ。このことを知り、私の中の風化しかけた情熱に灯がともった。同じように借り物競走をしたことのない人は多くいるはずだ。参加者を集めよう。一人では借り物競走はできないが、仲間がいれば出来る。今からでも遅くはない。
報道部で呼びかけを行ったところ、4人の参加者(自分とT、K、E)が集まった。借り物競走の人気の高さが伺える。お題は自分以外の3人の参加者が一つずつ出題。時間は夕方5時までだ。わくわくしながら紙を開いた。
「万人が鬱になるもの」
「空腹感」
「部員Wの彼女」
借り物競走のお題がこんなに難しいとは思わなかった。噂に聞いた以上だ。
まずは「万人が鬱になるもの」を探すことにした。どんなものを持っていったら皆が鬱になるだろう。友人に電話で聞いても知らないと突っ返されるばかり。考えが浮かばずに困ったのでコンビニに向かうことにした。鬱になるものの一つくらい見つかるだろう。ふらふらと店内を探していたところ、借り物競走に参加しているTの姿を見かけた。店の奥のほうでエロ本を立ち読みしているではないか。そっとしておいてやろうかとも思ったが、あえて声をかける。するとTは恥ずかしそうに言い訳を始めた。
「べ、別に興味があったわけじゃないんだから。ただ借り物競走で引いたから・・・」
確かに紙にはエロ本と書かれていた。友人に聞いても誰も持っていなかったのでコンビニに買いに来たという。一番まともなものを買うために選別していたらしい。うん、「鬱になるもの」を引いて良かった。
さて、コンビニの漫画を読んでいるうちに昔読んだSCHOOL D○YSという漫画を思い出した。あれを読めばたいていの人は鬱になるに違いない。部室に置いてあるので持っていく必要もないので簡単だ。
次、「空腹感」は後回しにして「部員Wの彼女」。あれ、そもそもWに彼女いたっけ?確かめるためにWに直接電話をしても全然出ない。ほかの部員たちもWの彼女は知らないし、見たこともないという。仕方ないので友人の家を訪問してフィギュアを借りていくことにした。彼曰く、「皆の嫁」だそうだ。だったらWの嫁でもあるはずだ。
最後は「空腹感」。もうすぐ日が暮れる。借り物競走に夢中になるあまり昼食を抜かした今の私はまさに空腹感だ。だからこれを最後に回したのだ。狙い通り。部室からカメラを借り、一食前で倒れている所を撮ってもらった。
さて、時間内になんとか全部集まったので部室に戻ることにした。ほかのメンバーもすぐに集まる。部員Eの手には胃薬の箱に割りばしが刺さった人形が握られている。どうやら胃の弱い「F先輩」を引いたが、先輩がバイト中だったので自作したらしい。
パソコン画面の写真もある。これは何だろう。持ってきたTに聞いたところ、「O先輩」というお題だったが、どうしても本人を連れてくることが出来なかったのでパソコンに入っていた写真の写真を撮ったらしい。さらに、Tは線をたくさん書いた紙を持ってこれは碁盤だと言っている。「碁盤」を引いたので紙とペンで作ったようだ。部員Kが引いたものは旗、嫁、かき氷。掛け持ち先の部室とコンビニを使って簡単に手に入れることが出来たらしい。
借り物競走とは創意と工夫の頭脳戦であり、一方で運も必要とされる競技であった。実際に連れてこられない人物や誰も持っていないものが指定されても、インスピレーションを駆使すれば勝利を勝ち取ることが出来る。かつて運動会に借り物競走が取り入れられていた理由は、子供たちの豊かな発想力により磨きをかけるためだったのだろう。成人式を間近に控えた私たちには不足していた経験だ。全国の運動会で借り物競走が取り入れられることを願って止まない。

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