東北大学新聞:

鳥人間サークル ウインドノーツと紙飛行機で勝負!

今年も冷たい風が吹く季節になった。そんな肌寒い、とある秋の日の夕方のことだった。

私は一人寂しく帰り道を歩いていた。二人並んで歩くカップルを見るたび、私の心にも北風が吹き抜けて行った。いつしか私は、暮れゆく夕べの空に自分を重ねて哀愁に浸っていた。もう何もかも捨てて二次元に逃避してしまおうか、と考えたとき、カラスの群れがどこかへ飛んでいくのが見えた。
「鳥は、自由でいいなあ…。それに毎朝早起きができて、仲間もたくさんいる…なんて充実した生活なんだ!」
私は鳥がうらやましくなった。たとえアニメが見られなくなろうとも、生まれ変わったら鳥になりたいと思った。ああ、鳥…。鳥人間になりたい…。ん?鳥人間といえば…。
あっ!あたかも鳥になったかのような経験をしているサークルが身近にあるではないか!しかも彼らは、鳥のように大空を飛行できるだけでなく、普通にアニメも見られるではないか!全くもってうらやましい限りだ!
私はウインドノーツに嫉妬した。溢れんばかりのジェラシーをぶつけたくて仕方がなかった。そこで私は、ウインドノーツと果し合いをすることにした。正直に、うらやましいと一言伝えればいいのに、ツンとした態度を取ってしまう…。いわゆるツンデレというやつなのであった。
では、勝負の方法は何がいいだろうか。悩む私の耳に、現在ウインドノーツは飛行機の機体を製作しているという話が入ってきた。そして私は閃いた。
「ならば飛行機作りで勝負だ!ただし材料は…折り紙だ!」
こうして私はウインドノーツに紙飛行機勝負を申し込んだ。あまりにふざけた勝負であるため、相手方を怒らせてしまうのではないか、と内心ヒヤヒヤしていたが、機体づくりで忙しい現役部員に代わって、OB・ОGの方々が勝負を受けてくれた。なんて懐の深いサークルなのだろう。
だが、何の取り決めも無しに勝負を行ってしまってはまずい。相手側が、持てる技術をありったけ詰め込んで、モンスター紙飛行機を製作してしまったら我々報道部に勝ち目は全くない。何か制限を加えなくてはいけないのだ。というわけで、私は事前にウインドノーツ側と話し合いを持ち、細かい勝負のルールを決めた。
対決は滞空時間の長さで勝敗を競うものとし、飛行機の材料は折り紙1枚のみで、はさみ以外の道具の使用を禁止することにした。こうしなければ、ウインドノーツ側は、尾翼などのパーツをフル装備した紙飛行機を作っていただろう。とにかく、これで報道部が不利になることはなくなったはずだ。
また私は、対決が決まった日から、紙飛行機作りの特訓を始めていた。まず、小さい頃の記憶を呼び起こし、覚束ない手つきでなんとか一つの紙飛行機を生産した。久しぶりにしては、なかなか見栄えも良く、高性能そうであった。私はその紙飛行機を「初号機」と名付けた。
早速飛ばしてみたところ、初号機は瞬く間に私の足元へと急降下し、沈黙してしまった。私とのシンクロ率が低すぎたせいなのであろうか。私はがっかりしたが、気を取り直して新たな機体づくりを始めた。まだ私は、ほとばしる熱きパトスを失ってはいなかった。
それから私は試行錯誤を繰り返した。百枚ほどの折り紙が消費されたころ、私は心身ともに疲れ果ててしまっていた。理想の紙飛行機を追い求める作業は、想像以上に辛いものだった。近くに研究所があって、博士がハイスペックマシンを開発してくれるという、昔読んだ漫画のような展開になって欲しかった。だが現実はそれほど甘くない。私は作業を切り上げて眠ることにした。
布団に入って何時間が経っただろうか、私は何者かの声によって目を覚ました。
「お前は、紙飛行機を作るときに、気持ちを込めているか?ただ惰性で作っているだけではないのか?そこが、お前とウインドノーツの差だ。紙飛行機を作るということは、折り紙に命を吹き込むということだ。それを忘れるな」
声の主の姿は見えなかったが、きっと折り紙の神様だろう。私は先ほどの言葉を心の中で反芻しながら、再び紙飛行機作りを始めた。
するとどうだろうか。それまでの作品とは比べものにならないほど、すさまじいオーラを放つ紙飛行機が、私の手の中で誕生した。ボディの美しさは銀河のように完璧で、飛ばしてみれば、その軌跡は流星のように鮮やかだった。まさに傑作である。私はそれを「スターロードギャラクシー」と呼ぶことにした。確かにこの傑作をうまく形容しているが、中学二年生あたりが好んで付けそうな、気取った名前に聞こえなくもなかった。まあ、それはともかく、遂に最高の紙飛行機が完成したのだ。私は勝利を確信した。
そして、対決の日がやって来た。愛機スターロードギャラクシーを携え、私は決戦の地である萩ホール前の芝生へと向かった。私を含め、報道部からは四人の精鋭が参加した。幸いにも天候は良好で、風も穏やかだった。まさに決闘日和である。
対決直前、それぞれ飛行機を飛ばす練習の時間をとった。戦いは情報が命であるため、私はウインドノーツの練習風景を凝視していた。制限を課していたとはいっても、恐るべき飛行機が出てこないとは限らない。紙飛行機型のターミネーターが私の喉元へ突進してくるかもしれないのだ。だが、実際現れたものは、見たところ何の変哲もない紙飛行機であった。私は安堵のため息をついた。
「この勝負、もらった!」
私は心の中で高笑いをしていた。もちろんそんな態度は圧倒的な死亡フラグなのであるが、そのときの私にはそれをへし折るだけの自信があったのだ。こうして、報道部とウインドノーツの紙飛行機対決が幕を開けた。
報道部は、まず挨拶代わりに滞空時間2.1秒を叩き出した。まずまずのタイムである。だがウインドノーツは、それを上回る2.5秒を見せた。どうやら一筋縄ではいかないようである。小手調べが終わり、両チームのメンバーの顔が引き締まる。勝負はヒートアップしていった。その後報道部は2.4秒を出した。じわりじわりと追いつこうとしていた。勝負の流れが報道部に傾こうとしたその時、なんとウインドノーツが5.9秒という記録を生み出してしまった。文章だと伝わりづらいかもしれないが、実際に体感してみると5.9秒は結構長いのである。
一気に差をつけられた報道部であるが、ここで一人の報道部員が最強最悪の秘密兵器を取り出した。折り紙をただ二つ折りしただけの、もはや紙切れと言えてしまうような飛行機である。確かに、これなら相当の滞空時間が見込めるぞ…。俄かに報道部の士気が上がった。勝負の行方はまだわからない。
そして秘密兵器が火を噴いた。ピラッピラッ。優雅に宙を舞う紙切れ。どよめきが両チームから発せられた。しかしその記録は3.2秒。残念ながら4秒の壁すら越えられなかった。
ついに報道部は追いこまれ、頼みの綱は、我が相棒であるスターロードギャラクシーのみとなった。逆転の可能性は低く、状況はかなり厳しいものだったが、私は勝ちたかった。勝ちたい!そう強く念じた瞬間、スターロードギャラクシーが光に包まれた。キュイイイイン…。二つの強い思いが共鳴していた。
「そうか、相棒!お前も勝ちたいんだな!よし、行くぞ!」
私は紙飛行機と心を重ねた。今、必殺技の名前を叫べば何でもできそうな気がした。しかしふさわしい名前が思いつかず、結局「んあっ」という短い奇声とともにスターロードギャラクシーは投射された。一番の見せ場なのに、格好よく決まらなかった。もちろん紙飛行機は本来の実力を発揮し切れず、記録は2.0秒であった。こうして、あえなく報道部はウインドノーツに完敗した。紙飛行機に変な名前を付けるだけでは勝てるはずがなかったのである。折り紙の神様を登場させたり、紙飛行機と会話したりするなどの超展開は全くの無意味だった。私は潔く負けを認めた。
結論だが、物事には、その道のプロがいる、ということを今回の対決は私に教えてくれた。紙飛行機とは言え、飛行機作りの素人である私にとっては、今回の結果は当然のものだったのかもしれない。
また、鳥になりたい、と夢見たのも全く浅はかなことだったと私は気づいた。鳥は空を自由に飛ぶことができるが、私のように地べたを速く走ることはできない。そう、みんな違って、みんないいのである。

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