東北大学新聞:

紫綬褒章の中澤教授 受章記念インタビュー

11月2日、平成21年度秋の褒章が発表され、本学理学研究科附属大気海洋変動観測研究センターの中澤高清教授が紫綬褒章を受章した。CO2を中心とする温室効果気体の変動を多角的に観測し、その循環の解明に向けた研究を推進したことが高く評価された。中澤教授は本学理学研究科博士課程を修了後、1976年本学理学部教務系技官となり、その後、助手、助教授、教授を経て現職に至る。

―中澤先生が行ってきた温室効果気体の研究について教えてください

助手になった1978年から大気中CO2の濃度測定を始めました。まだ「地球温暖化」という言葉が世の中に出回る以前のことです。アメリカではその20年前にパイオニア的な先行研究の例がありましたが、日本ではまったく手付かずの状態。もちろん、測定装置もなければ観測方法も確立されていませんでした。また、CO2の循環を研究するためにはグローバルな観測手段が必要です。しかし、外国の大きな研究機関とは違い、大学には海外に観測拠点を設けるお金がない。あれこれ考えたあげく、民間の航空機や商船を利用して世界各地から大気のサンプルを集めました。
こうして研究が進むにつれ、CO2にとどまらず、メタンや一酸化二窒素といったその他の温室効果気体まで調査の対象を広げました。さらに南極・北極などにも調査範囲を広げ、昔の大気の温室効果気体の復元にも乗り出しました。

―現在はどのような研究をなさっていますか?

多くのことについて色々とやっています。たとえば、南極の内陸部で3000mメートル以上の長さの氷床コアを採掘し、その中に含まれる過去の空気を取り出して分析することにより、当時の温室効果気体の濃度を推定する作業を行っています。ドームふじコアと呼ばれるこの氷床コアを用いると、およそ72万年前まで分析が可能。掘削前は約100万年前まで分析できると考えられていましたが、底部で思わぬ氷の流動があったようです。つい先日72万年におよぶ変動の概要を復元する分析作業は終わったので、今後は興味深い時代について重点的に調査していきます。このように様々な調査・研究を通して、温室効果気体の循環を定量的に理解することを目的としています。

―今後の世界的な取り組みについて期待することは?

日本は温室効果気体の排出量を1990年比で2020年までに25%減らすという新たな目標を掲げました。これを達成するためには大変な努力が必要です。私たちの生活にも何らかの影響が出るでしょう。しかし、温暖化の問題は、日本だけが頑張れば解決できるような代物ではないわけです。CO2の排出量トップの中国やアメリカ、さらには新興国のインド、ブラジルなど多くの国が参加する必要があります。そうした国際的な具体的枠組みを一刻も早く作ること。これが最重要の課題だと思います。

―その中で、研究者に求められていることは?

温室効果気体の排出は現代人の生活とは切っても切り離せないものです。それゆえに厄介な問題。しかし、このままの状態だと、数十年から100年という非常に短いスパンで大きな気候変動が起こります。気候が暖かくなることでメリットもありますが、デメリットの方がはるかに大きい。それを科学的に解明して社会に提示すること、これこそが我々研究者にできることだと思います。

―普段学生に接して感じることはありますか?

「もっと積極性がほしい」学生の研究活動を見ていると、そんな感じがします。もちろん自主的に取り組む頼もしい学生もいますが、それは少数。指示されたことだけでなく、さらに自分で考え、試行錯誤する努力をしてほしいですね。また、先行研究から予想されることと違う結果が出た場合でも、すぐに諦めるのではなく、もっと深く考えてもらいたい。間違いだと思った結果が新たな発見であるということも十分あり得るのです。
私自身の研究も失敗の連続でした。学生には失敗を恐れず、挑戦する姿勢を身に着けてほしいと思います。そして研究を楽しんでほしいですね。

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