東北大学新聞:

科学予算削減に総長批判

政府の行政刷新会議の「事業仕分け」で11月末、国立大学法人運営交付金や科学研究費補助金など、本学の研究活動のよりどころである科学関連予算に「見直し」または「縮減」の判定が下った。運営交付金(10年度概算要求1兆1708億円)は、08年度に473億円交付され本学の同年度経常収益の約40%を占める規模。科学研究費補助金は、08年度で約112億円が本学に支給されている。

これに対し、ノーベル賞受賞者をはじめ多くの研究者らは強い抵抗感をあらわにした。中でも本学の井上明久総長ら旧帝大7校と私立2校の学長は11月24日、「大学の研究力と学術の未来を憂う」と題する共同声明を発表、仕分けの「見直し」判定に「見直し」を迫った。また、大学は直後の26日、臨時教育研究評議会を開き、科学関連予算削減方針への対応に追われた。
研究費削減方針には「雄弁」な井上総長だが、自らの巨額な研究費の使途に関しては、どうも口が重い。本学金属材料研究所の02~08年度の自己評価報告書によると、井上総長は00年度から現在まで、科研費など200億円を超える研究資金を代表者として国などから支援されている。
200億円の礎となった総長の研究成果として有名なものの一つに、93年頃の実験によるバルク金属ガラス材料がある。この成果をしたためた論文4本については07年に、研究不正を告発する複数の匿名投書が東北大などに届いていた。これに対して大学は同年12月25日に内部調査結果を発表、告発の内容を全面否定したのだが、この研究不正を晴らす好材料となるはずの「実験ノート」や「試料」などの「証拠」は明示されなかった。
なぜか――。論文4本すべてにおいて総長と共同研究者の張院長は07年12月27日の記者会見でこう説明している。「実験ノートや試料が帰国の際、中国・天津港でコンテナごと海に落ち一切残っていない」 (07年12月28日河北新報)。
コンテナは本当に海に沈んでしまったのか、引き揚げはされないのか、それに代わる証拠物はなぜ日本に残っていないのか……。巨額の科学予算が投入された実験データは、多くの疑問を残し、明快な説明がないまま、深遠な海のもくずと消えたのである。
消えたのは証拠だけでない。井上総長らの研究対象として多額の国費が投じられたバルク金属ガラス材料は、ゴルフヘッドの試作品以外、未だに何らの工業製品としても実用化されていないという。

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