東北大学新聞:

特集 突撃ッ!となりの研究室 第11回 「岩石学固体地球化学」

「突撃となりの研究室!」今回は理学研究科・藤巻宏和教授の研究室を訪問した。研究室の名称は岩石学固体地球化学。理学研究科の地球惑星物質科学科に属している。中心となるのは藤巻教授と招聘研究員や大学院生、学部4年生が在籍する。隕石の研究から環境化学まで幅広い分野を対象としている。藤巻教授との談話をもとに、研究室の様子を紹介しよう。

「隕石をめぐっては様々な論争が起こっています」藤巻教授はその一例を語ってくれた。論争の発端となったのは、スウェーデン・ムオニオナルスタ村で発見された隕石。その隕石には花崗岩(かこうがん)という地球に多く存在する火成岩が含まれていることが藤巻教授のグループの調査で明らかになった。通常の隕石には存在しないはずの花崗岩。しかし、ムオニオナルスタ隕石には確かに存在している。もし隕石に花崗岩が含まれるならば、そこには二つの可能性が挙げられる。まず一つ目は、大気の摩擦により高温になった隕石が地球と衝突する際に地表の岩石を取り込んだという見方。もうひとつは、隕石の母天体である小惑星にもともと花崗岩が存在していたとする考えだ。しかし、これまでの計算シミュレーションの結果を見ると、地球に衝突する際でも隕石内部はそれほど高温にはならず、隕石中に地表の花崗岩を溶かし込むことは難しい。また、地球規模の天体でないと花崗岩は生成されないため、隕石の母天体である小惑星に最初から含まれていたということも考えにくい。さらに、花崗岩が人間の手により故意に混入された可能性もあるということで、X線を用いた精密な調査を行っているという。
いずれにせよ、これまでの隕石研究の考え方を相当変えねばならないほどの大発見。それゆえに、研究者の間で激しい論争が起こっており、藤巻教授も日々研究と格闘している。
次に環境化学の研究を紹介する。環境化学の分野ではウメノキゴケという植物のコケを使って、大気の粉塵(ふんじん)汚染を調査研究している。藤巻教授の調査によると、近年日本における粉塵汚染の割合は山間部でも工業地帯でも大きな違いはないことが明らかになった。モリブデンやニッケルといった産業的な汚染物質は仙台‐脊梁(せきりょう)山脈間において、大きな違いはないという。この結果から、粉塵汚染の物質が工業地帯から山間部まで広がっているという可能性が高まった。
近年では建築物に使われるアスベストの被害防止のため、多くの企業に出向いて講演会を実施。これまで培った汚染測定のノウハウを社会に広める活動も行っている。
どうして岩石の研究を始めたのかという問いに対して、藤巻教授は「NASAのアポロ計画をテレビで見たのがきっかけ。テレビのアナウンサーの言った一言で、岩石学の研究に興味を持ちました」。その一言とは―アポロ11号が月から持ち帰った岩石を研究すれば、月の全容が解明されるはずです―というもの。「それなら、庭に落ちている石ころを調べれば、地球のすべてが分かるのかな」と思い、一念発起して本学の理学部に入学。その後はすぐに岩石学の研究室に転がり込んだという。
こうした経歴をもつ藤巻教授であるが、最近ではモンゴルからの留学生を積極的に受け入れている。
モンゴルでは、遊牧生活から国民の定住化が進むとともに、安定した職業が必要になっている。資源大国のモンゴルでは鉱山の開発が進み、岩石学的な知識を有した人材が求められている。
そうした流れの中で、藤巻教授の研究室を巣立った研究者は、母国で鉱山開発の第一人者として活躍しているという。
現在はイランからの特別招聘研究員が在籍するなど、国際色豊かな研究室だ。最後に藤巻教授は「近頃の英文の報告書などでは、地学は単に『geology』ではなく、『environment』がキーワードになっている」と話し、環境というテーマが地学とも密接に結びついていると語ってくれた。

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