ニューロン新生に分子が関与 -Ephrin-A5が新生を制御
ヒトの神経細胞(ニューロン)の新生を制御しているのが、その軸索の伸長に関わる分子Ephrin-A5であることが、本学大学院医学系研究科の大隅典子教授の研究グループによって明らかになった。
大隅教授らはEphrin-A5の遺伝子を欠損したマウスを用いた実験で、海馬歯状回におけるニューロン新生が低下していることを発見、Ephrin-A5がニューロン新生を制御するメカニズムの一端が解明された。海馬歯状回は脳の記憶や学習に関わる部位で、成熟した哺乳類においてもニューロンが新たに新生することで知られている。この他にも嗅覚を司る脳室下帯などでニューロンが作られることが分っていたが、その詳細な仕組みについては不明であった。本研究成果は、ニューロンとそれを取り巻く様々な微小環境、及びニューロン新生に影響を与えるとされている脳血管のサイズとの関係を解き明かす橋頭堡となると考えられている。
「以前から心理学にも興味があり、神経科学的な観点からも研究できないかと思っていた」と語る大隅教授は、同時にこの成果が精神医学にも応用できる可能性を示唆する。動物の行動とニューロン新生の相関関係を示すデータは既に示されており、ニューロンの新生に止まらない幅広い医学的応用が期待されている。
一方で、ニューロン新生を促進する要因についても多くのことが明らかになっている。栄養学的には、多価不飽和脂肪酸の一種であるアラキドン酸を餌とともに摂取した子ラットのニューロン新生が促進される結果を大隅教授は報告している。またカナリアの例のように、歌を覚えるなどの学習行動がニューロン新生に結び付くデータもある。
脳神経系の医学はヒトの行動・心理・病理に関わるありとあらゆる要素を抱えたブラックボックスである。ニューロンを始めとした今後の研究によって生体の多様なメカニズムが明らかにされれば、医学に対するより多角的なアプローチが可能となるだろう。
