井上総長、告発者を提訴 「要望する会」の不正告発 HP上の公開は名誉棄損
井上明久総長と横山嘉彦准教授(本学金属材料研究所)は、「井上総長の研究不正疑惑の解消を要望する会(フォーラム)」による研究不正告発など一連の活動が自身の名誉を著しく傷つけたとして、フォーラムの日野秀逸代表(同名誉教授)、大村泉世話人(同経済学研究科教授)、高橋禮二郎世話人(同国際文化研究科非常勤講師)、松井恵弁護士の4名に対し、1650万円の損害賠償とホームページ(HP)の一部削除などを求める訴えを仙台地裁に提訴した。HP上での謝罪文の掲載も求めている。
日野氏を代表とするフォーラムは井上氏が2007年と1996年に発表した「金属ガラス」に関する2本の論文(以下、07年論文・96年論文)について、データの捏造や改ざんなどの研究不正の疑惑があるとして、昨年10月に同氏を本学に告発していた。その後、告発は対応委員会の調査によって不受理となったが、フォーラムは昨年12月に再度、告発書を提出している。
6月25日付けの訴状で井上氏らは、昨年11月に本学がフォーラムの告発を退けたにも関わらず、2度にわたる告発文がHP上で全文公開されていることが名誉棄損に当たると指摘している。さらに、研究不正の疑惑がHPによって全世界に公開されることは「研究者としての信用を根本的に失わしめ、研究者生命が絶たれることにもなりかねない」と主張している。また、名誉回復措置として、当該HPの冒頭部分に謝罪文を掲載することを求めている。
井上氏らは訴状で、フォーラムの告発・主張に対して以下の反論を行っている。
①【合成写真に関する主張】
井上・横山両氏が執筆した07年論文で掲載されている金属ガラスの断面写真が、試料の中心部を意図的に隠した合成写真ではないか、とフォーラムは主張する。しかし、井上氏らはこの断面図は4枚の写真を組み合わせただけの組写真であり、フォーラムの主張するような意図的な合成写真ではないとしている。さらに、「断面写真を改ざんするのであれば組写真であることを分からないように細工するはず」として、自身に改ざんの意図は全くなかったと疑惑を否定している。
②【実験装置が存在しなかったとする主張】
フォーラムの告発では、96年論文が執筆された当時、金属材料研究所(金研)には論文の試料を作成するための装置が存在しなかったと指摘している。金属ガラスの生成のため、200㌘のジルコニウム合金インゴットを一度に溶解するには特殊なアーク溶解装置が必要であるが、そうした実験装置が当時の金研に存在したという記録はないと主張する。これに対し井上氏らは、「実験には告発者のいう特殊な装置は必要なく、論文に記載されていない事実を前提としているため、そもそもの指摘が誤っている」と述べている。
こうした点から、フォーラムの告発内容には「根拠に合理性がもともとなく、全くの言いがかりである」として、名誉が棄損されていると訴える。
しかし、上記2点以外にも告発内で指摘されている問題が存在する。その箇所は訴状に掲載されていないが、井上氏らは昨年にこの問題に対してErratum(正誤表)を金属学会の英字誌に掲載し、論文の記載に不備があったことを認めている。しかし一方では、依然として問題が解決していないとの指摘もある。こうした点が裁判の争点になるか注目される。
フォーラム世話人の大村教授らは「学術上の議論がなぜ名誉棄損と言われなければならないのか理解できない。まずは、学内のオープンな場で議論を戦わせるべきではなかったか」と述べ、今後の対応については「訴状内容を精査している」とコメントした。
